ひな祭りといえば雛人形が主役です。
でも雛人形は年に1回しか飾らないため、スムーズに飾ったり片付けたりするのが難しく感じるのではないでしょうか。
そこで、このページでは雛人形の飾り方や飾る時期・片付ける時期について詳しく解説していきます。
雛人形とは?もとは自分の代わりに穢とともに川に流した
まず、雛人形はどのようなものかについて紹介しますね。
ひな祭りは「桃の節句」ともいい、正式名称は「上巳の節句(じょうしのせっく、じょうみのせっく)」といいます。
古代の中国でおこなわれていた「上巳祭(じょうしさい、じょうみさい)」という行事が、奈良時代に遣唐使によって伝来され、宮中行事としておこなわれるようになりました。
このころの上巳の節句は、穢(けがれ)を水に流し、邪気払いをすることが目的でした。
日本では最初は「曲水の宴(きょくすいのうたげ)」という、庭の川に盃(さかずき)を流す行事でした。
いっぽう平安時代ごろ、宮中や貴族の女の子のあいだで小さな人形遊びが盛んに。
これを「ひな遊び」「ひいな遊び」といいます。「ひな」「ひいな」とは小さくてかわいらしいという意味です。
やがて上巳の節句のときに、ひな遊びの人形を船に乗せてながすことで、自分の身代わりに穢を乗せて流し、邪気払いをするようになりました。
これを「ひな祭り」と呼ぶようになり、流す人形を「雛人形」と呼ぶようになります。
そして江戸時代になって、武家を中心に雛人形を家に飾るようになり、現在のような雛人形になりました。
雛人形は次第に豪華になって、男女一対の雛人形のほか、三人官女などの人形やいろんな飾りが増えていったのです。
なお、雛人形を川に流す風習は、一部地域で「流しびな」という形で残っています。
雛人形は男女一対で雛人形と呼ぶ

雛人形は、一番上の男の人形をお内裏様(おだいりさま)、女の人形をおひな様と呼ぶことがあります。
じつは、この呼び方は間違いなのです。
童謡『うれしいひなまつり』でも「お内裏様とおひな様」と歌われていますが、この歌詞は誤りです。
おひな様とは雛人形のことで、雛人形は男女一対で雛人形と呼びます。
また、内裏(だいり)とは天皇の私的区域を意味します。
お内裏様とは、「内裏びな」という天皇と皇后をモチーフとした男女一対の雛人形のことなんですよ。
なお、雛人形には右大臣・左大臣という人形がついていることがありますよね。
じつはこの右大臣と左大臣も誤りなんです。
右大臣・左大臣と呼ばれているのは、随身(ずいじん)といいます。
童謡『うれしいひなまつり』では「赤いお顔の右大臣」という歌詞がありますが、これは間違いですよ。
ちなみに、赤い顔をしている人形は向かって右ですが、もし右大臣・左大臣という場合は人形側から見て右・左になるので、童謡の歌詞は左右逆です。
雛人形は2月4日から2月中旬に飾る
ここからは雛人形の飾る時期について説明しますね。
雛人形は立春、つまり2月4日から飾り始めます。
だいたい2月中旬までに飾るのがベストですが、おそくともひな祭りの1週間前までには飾りましょう。
理由は、立春の1日前の2月3日は節分だからです。
節分では邪気払いをします。
そのため、節分直後で邪気の影響がない2月4日が一番よいのです。
節分から日が経てば経つほど邪気払いの効果が弱まります。
また、ひな祭りは春の行事でもあるので、春の始まりの日=立春がよいともいわれていますよ。
雨水に雛人形を飾るという風習もある
別の説として、雨水(うすい)のときに雛人形を飾るのがよいともいわれます。
雨水は、二十四節気(にじゅうしせっき)という季節の考え方のひとつです。
むかし、雨水は農作業をはじめる目安としていたので、それに合わせて雛人形を飾っていたんですね。
ほかにも雨水のときがいいとする理由は諸説あって、はっきりとしたことはわかっていません。
なお雨水は毎年変わり、2月18〜19日ごろになりますよ。
3月2日に飾る一夜飾りは避ける
3月3日の直前、3月2日に飾るのはやめましょう。
一夜飾りといって、縁起が悪いとされています。
縁起が悪い理由は、一夜だけ飾ることが葬儀を連想させるためですよ。
雛人形はひな祭りのあとになるべく早く片付ける
雛人形の飾る時期がわかりましたが、つぎは雛人形を片付けるのはいつがいいかが気になりますよね。
雛人形を片付けるのは、3月3日のひな祭りが終わったら、できるだけ早く片付けるようにしましょう。
具体的な時期が決まっているわけではありません。
しかし注意することがあります。
それは、天気がよくて乾燥した日に片付けることです。
雨の日などの湿気が多い日に片付けると、カビが発生するなど、人形に悪影響がある可能性があります。
また、雛人形を片付けるのが遅いと将来結婚するのがおそくなったり、結婚できなかったりするという話を聞いたことがありませんか?
この話に根拠はありませんが、いつまでも雛人形を片付けずにダラダラと放置しないように戒めるための言葉なんですよ。
とはいっても早ければいいとうわけではありませんので、天候を選びながら片付ける日を決めましょう。
ちなみに、雛人形を片付けることを「ひな納め」といいますよ。
雛人形を飾る場所
雛人形は床の間に飾るのが一般的です。
しかし最近はマンションやアパートでの暮らしも多く、さらに新築の家に床の間を設置しない家も増えました。
そんなときは、居間(リビング)が最適ですが、設置場所が取れない場合もありますよね。
その場合、家のどこに置いても構いません。
とはいっても、直射日光があたる場所や、湿気の多い場所、炊事場・風呂場・便所の近くなど水気のある場所は避けてください。
人形が傷むためです。
また、廊下や玄関などの狭く、近くを人が通るところも避けます。
もし人が人形にあたったら危険ですし、人形も傷ついてしまうからです。
雛人形の飾り方や並べ方
ここからは、雛人形の飾り方や並べ方について紹介していきますね。
雛人形を飾る順番は、ひな壇の上の方から飾っていくのがおすすめです。
もし下から飾っていると、誤って倒れたときに、下の段に落ちて傷ついてしまうためですよ。
それでは、雛人形の上から順に飾り方をみていきましょう。
以下は、七段飾りの場合の飾り方になります。
男びな・女びなの飾り方
雛人形は全体を指して雛人形とも呼びますが、一番上の男女一対の人形のことも雛人形と呼びます。
また現在のほとんどの雛人形は、天皇・皇后をモチーフとした「内裏びな」です。
そのため、上段の男女一対の雛人形のことを「親王(しんのう)」と呼ぶことがあります。
男の人形は「男びな(おびな)」、女の人形は「女びな(めびな)」といいます。
男びなと女びなを左右どちらに並べるかですが、現在ではどちらでもいいことになっていますよ。
もともと江戸時代以前の日本の作法では、左側が上座でした。
しかし明治になって、欧米に合わせて日本でも右側が上座に変わります。
そのため明治以降では、東京など新しい作法に合わせる地域と、京都など古い作法に合わせる地域に分かれました。
現在では、欧米式の右側が上座のやり方のほう多数派ですよ。
いまの雛人形は天皇・皇后がモチーフの内裏びなが主流です。
現在の皇室は欧米式の作法なので、それに合わせているところが多いんですよ。
なお、左右は人形側から見ての左右なので、人形を見る側、つまり対面したときの左右は逆になります。
ですから、欧米式の右側が上座でしたら、天皇である男びなが向かって左になります。
いっぽう、江戸時代以前の左側が上座の場合は、天皇である男びなは向かって右です。
| 男びな | 女びな | ||
|---|---|---|---|
| 欧米式 (現在の日本式) | 右側が上座 | 向かって左 | 向かって右 |
| 日本式 (江戸時代以前) | 左側が上座 | 向かって左 | 向かって右 |
▼男びなと女びなの飾りですが、男びなは頭に冠をつけ、腰に太刀を差し、片手に笏(しゃく)を持ちます。

▼女びなは、両手で開いた桧扇(ひおうぎ)を持ちますよ。

なお、男びなと女びな以外の人形は、全国的に江戸時代以前の日本式で統一されています。
そのためこれ以降は、どこの地域でも配置の仕方は同じになりますよ。
ちなみに、なぜ男びなと女びな以外は日本式のままなのか、理由はわかっていません。
三人官女の飾り方
三人官女(さんにん かんじょ)は、女びなの世話係です。
親王のすぐ下側の2段目に飾ります。
三人官女のうち、1人は座り、2人は立っています。
▼座っている官女は眉がなく、お歯黒をしているのが特徴で、既婚女性を表しています。

座ってお歯黒をしている官女は、2段目の中央に配置してください。
飾りですが、中央の座っているお歯黒の官女には三方(さんぼう)という台を持たせてください。
残り2人の官女ですが、片足が前に出ている場合があります。
向かって左の足が出ている官女は左側に、向かって右の足が出ている官女は向かって右側に配置しましょう。
足が出ていない場合は、左右どちらに配置しても構いません。
▼向かって左側の官女には提子(ひさげ)というお酒を入れる道具を持たせます。

▼向かって右側の官女には長柄銚子(ながえ ちょうし)というお酒を注ぐ道具を持たせましょう。

なお、雛人形によっては3人とも座っていたり、3人とも立っていたりしますよ。
この場合は、顔の眉毛とお歯黒で中央に配置する官女を選んでください。
また、三人官女が持つ道具も異なっている場合があります。
五人囃子の飾り方
五人囃子(ごにんばやし)も雛人形には欠かせない人形ですね。
五人囃子は、音楽を奏でる役目ですよ。
五人囃子を飾るのは、3段目です。
向かって左から楽器の大きな順に、太鼓(たいこ)、大鼓(おおかわ)、小鼓(こづつみ)、笛、謡(うたい)というように並べまてくださいね。
それぞれの人形は楽器に合うような格好をしているので、人形に合う楽器を持たせましょう。
随身の飾り方
随身(ずいじん)は、左右一対の男の人形です。
右大臣・左大臣と間違われることがありますが、右大臣・左大臣ではありませんよ。
随身の役割は、男びなと女びなの護衛で、いまでいうSPのような存在です。
随身は、若者と年配者のセットになっていますよ。
若者は近衛少将(このえ しょうしょう)、年配者は左近衛中将(さこのえ ちゅうじょう)とも呼ばれます。
随身を飾るのは4段目で、左に若者、右に年配者の人形を配置してくださいね。
また随身は2人とも、頭に冠、腰に刀、背中に矢、左手にも矢、右手に弓を持ちます。
さらに左右の随身のあいだには、菱餅の飾りや、お膳などの飾りを配置しますよ。
仕丁の飾り方
仕丁(しちょう)は5段目に飾る人形です。
3人組の男の人形で、雑務をおこなう役目があります。
3人はそれぞれ、怒り・泣き・笑いを表す表情をしているのが特徴です。
順に怒り上戸・泣き上戸・笑い上戸と呼ばれています。
仕丁の表情には、子どもが表情豊かに育つように願いを込めているとの説がありますよ。
仕丁を配置するときは、左から順に怒り上戸・泣き上戸・笑い上戸と並べてください。
そして怒り上戸には熊手(くまで)、泣き上戸には沓台(くつだい)、笑い上戸には箒(ほうき)を持たせます。
なお、雛人形によっては、持ち物がちり取りや傘などに変わっていることもありますよ。
ひな道具の飾り方
6段目から7段目には「ひな道具」という家具などの道具類を飾ります。
飾り方に決まりはありませんが、大きな飾りを7段目に配置した方が安定しますよ。
6段目にタンス類・鏡台・茶道具などを配置し、7段目は左右に駕籠(かご)・御所車(ごしょぐるま)、中央に重箱を置くことが多いです。
五段飾りの場合の飾り方
七段飾りの雛人形の飾り方を紹介してきましたが、雛人形には七段飾りより少しコンパクトな五段飾りがあります。
▼飾り方は、七段飾りと同じですよ。

ただし五段飾りは、仕丁がなく、下2段の飾り物が1段になっていることが多いです。
三段飾り・二段飾り・親王飾りの場合の飾り方
最近はマンションやアパートでの生活も多くなり、コンパクトな雛人形の需要も高くなっています。
そのため、三段飾りや二段飾り、親王飾りというコンパクトな雛人形も人気です。
▼三段飾りや二段飾り、親王飾りの場合も、飾り方は同じですよ。

三段飾りの場合は、1段目が親王、2段目が三人官女、3段目が飾り物です。
五人囃子や随身・親王飾りなどはついていません。
親王飾りは、1段目の親王のみです。
ただし台座のサイズが大小様々なものがありますよ。
掛け軸飾りもある
雛人形の出し入れの手間が取れない場合や、雛人形の収納場所がない場合もあると思います。
そんなときには、掛け軸飾りというものがありますよ。
▼掛け軸飾りは、掛け軸に雛人形が描かれたものです。

飾り付けや片付けは、開いたり巻き取ったりするだけなので、簡単ですよ。
収納場所も取りません。
さいごに
雛人形は年に一回しか飾らないため、スムーズに飾ったり片付けたりできないですよね。
人形を出してから飾るまでのようすを写真や動画に収めると、片付けるときの参考になるので、おすすめです。
また、来年に出して飾るときにも参考になりますよ。
雛人形を手際よく飾って片付けることができれば、子供が親を見る目も変わるかもしれません。
また、雛人形を飾ったり片付けたりしながら、子供に雛人形の説明をしてあげてみてはいかがでしょうか。