土用の丑の日(どようのうしのひ)は、夏の楽しみな行事のひとつですよね。
土用の丑の日といえば、ウナギ(鰻)です。
町のいろいろなお店からウナギを焼くいい香りがして、ついつい足が向いてしまうのではないでしょうか。
また、日本人は大昔からウナギが大好きで、ウナギの専門店があるほど。
毎年、土用の丑の日が楽しみで仕方ありません。
私の場合、どうしても土用の丑の日となるとウナギを食べることしか頭にありませんが、よく考えてみると、いろいろなことが思い当たりませんか。
- なぜウナギを食べるようになったのか
- 土用の丑の日とはどんな意味があるのか
- いつ土用の丑の日ができたのか
- そもそも土用の丑の日はいつなのか
そこで、このページでは土用の丑の日がいつなのか、土用の丑の日の意味や由来、なぜウナギを食べるのか、おすすめウナギ料理やウナギを安く食べられる店などについて、詳しく紹介しますね。
土用の丑の日はいつ?2021年は7月21日火曜日と8月2日日曜日の2度ある!
まずは、2021年(令和3年)の土用の丑の日がいつなのかが気になりますよね。
2021年の土用の丑の日は、7月28日の水曜日です。
なお、土用の丑の日は毎年日にちが変わります。
そこで、2021年から5年間の土用の丑の日をみてみましょう。
▼2021年から5年間の土用の丑の日は、以下のとおりです。
なぜ、土用の丑の日が2度ある年があるのかが気になりますね。
これについては、あとで紹介します。
土用は季節の変わり目を意味していて、土用の丑の日は各季節ごとにある
そもそも土用の丑の日は、どんな意味があるのか気になりますよね。
まずは、土用の丑の日の意味から紹介していきます。
土用の丑の日とは、「土用」という期間中にある「丑」の日ということです。
土用というのは、季節の変わり目を意味するものですよ。
「二十四節気(にじゅうしせっき)」という季節を表す考え方と関係があります。
二十四節気は、中国の古い時代に生まれたもので、一年を24等分して季節を表しました。
日本には、飛鳥時代ごろに伝来したといわれています。
土用は、二十四節気を補足するため日本で生まれた「雑節(ざっせつ)」というもののひとつ。
春夏秋冬といった四季の最後の18日間という意味です。
春夏秋冬のそれぞれの始まりは、立春・立夏・立秋・立冬で、「四立(しりゅう)」と呼んでいました。
土用は、四立それぞれの前18日間ともいえますよ。
土用の初日は「土用入り」、土用の最終日、つまり四立の前日は「土用明け」といいます。
土用明けは、季節の分かれ目という意味で「節分(せつぶん)」ともいいますよ。
つづいて丑についてですが、昔の日本では、1日ごとに干支(えと)をあてていました。
だから、土用の丑の日とは、「土用の期間中で干支の丑にあたる日」ということです。
そして四季ごとに土用はあるので、実は土用の丑の日は春夏秋冬それぞれにあるんですよ。
土用の丑の日が季節に2日あることも
土用の期間は、18日です。
いっぽう、干支は12種類ありますよね。
ということは、干支のめぐりかたによって、土用の期間に丑の日が2度ある場合も出てくるのです。
これが、まれに土用の丑の日が2度ある理由なんですよ。
土用の丑の日が2度ある場合、最初の丑の日を「一の丑」、2度目の丑の日を「二の丑」と呼びます。
具体的には土用の入りの干支が、子(ね)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)のときだと、土用の期間に丑が2度ありますね。
土用は五行説という考え方から生まれた
土用の時期は、二十四節気が元になっていると紹介しました。
土用とう言葉自体は、「五行説(ごぎょうせつ)」という考え方から生まれたんですよ。
五行説というのは、中国で生まれて、日本に伝わりました。
人間や自然などこの世のあらゆるものは、「木」「火」「土」「金」「水」という5つの要素によって構成されているという考え方なんですよ。
鯉のぼりの吹き流しの色や、七夕飾りの短冊の色なども五行説に由来しています。
▼日本では、四季にも五行説を当てはめました。
季節 | 五行説 |
---|---|
春 | 木 |
夏 | 火 |
秋 | 金 |
冬 | 水 |
各季節の変わり目 | 土 |
季節の変わり目の期間に「土」が当てられたので、季節の変わり目の期間を「土旺用事(どおうようじ)」と呼ぶようになりました。
そして、土旺用事が「土用」に変化したんですよ。
ちなみに、土用は二十四節気を補助する目的で日本でつくられた「雑節(ざっせつ)」呼ばれるもののひとつです。
土用の時期は体調を壊しやすいため精がつく食べ物を食べるならわしがあった
土用の丑の日の意味がわかったら、土用の丑の日のならわしについて紹介していますね。
土用は、季節の最後の期間であり、次の季節の前の期間でもあると紹介しました。
つまり、土用とは季節の変わり目の時期なんですよ。
季節の変わり目は、気温や天候が安定しないことが多く、体調を崩しやすいときですよね。
そこで、昔の人は体調を崩さないようにするために、いろいろと考えました。
これらは、すべて邪気払いの力があるものによって、邪気を払って、病気にならないようにしようとしました。
同じように土用の期間には、特定の干支の日に語呂合わせで決まった食材を食べると精がついて病気にならない、というならわしも生まれました。
▼季節ごとの土用の丑の日に食べるものは、以下のとおり。
季節 | 土用の目安期間 | 次の四立 | 干支の日 | 頭文字 | 食材の例 |
---|---|---|---|---|---|
春 | 4月17日~5月5日ごろ | 立夏 | 戌(いぬ) | い | イカ・イモ・イチゴ |
夏 | 7月20日~8月7日ごろ | 立秋 | 丑(うし) | う | ウナギ・ウメ・ウリ |
秋 | 10月21日~11月7日ごろ | 立冬 | 辰(たつ) | た | タイ・タマネギ・ダイコン |
冬 | 1月17日~2月3日ごろ | 立春 | 未(ひつじ) | ひ | ヒラメ・ヒジキ・ヒエ |
各季節の土用で、なぜそれぞれの干支の日が選ばれたのかは、定かではありません。
語呂合わせという点が、日本らしいですね。
夏の土用の丑の日だけが有名なのは、ウナギを食べるならわしが定着したため
土用の丑の日は、四季それぞれにあります。
それなのに、現代では夏以外の土用の丑の日は、存在すら知らない場合も多いと思います。
なぜ、夏の土用の丑の日だけが注目されるのでしょうか。
それは、夏の土用の丑の日にウナギを食べて精をつけるというならわしが生まれたからですよ。
夏の土用の丑の日=ウナギのインパクトが強すぎて、夏の土用の丑にウナギが定着するとともに、ほかの土用の丑の日の印象がうすくなっていったんです。
ウナギの旬は秋から年末なのに土用の丑の日にウナギを食べる理由はなに?平賀源内説が有名
夏の土用の丑の日は、頭に「う」がつく食材を食べるといいと紹介しました。
しかし、「う」がつく食べ物はほかにもあるのに、なぜウナギなのか気になりますね。
ここからは、なぜ土用の丑の日にウナギを食べるかについて紹介しますよ。
実は、ウナギの旬は夏ではありません。
ウナギの旬は、秋から年末にかけての時季なんですよ。
ウナギは、冬眠をします。
だから、冬眠前のウナギは栄養をたっぷりと蓄えているからおいしいのです。
夏のウナギが旬ではないから、おいしくないとうわけではありません。
でも、せっかくなら旬の食べ物を食べたいところ。
旬ではないウナギを、土用の丑の日に食べるようになった理由には、さまざまな説があります。
その中でも一番有名なのが、平賀 源内(ひらが げんない)が考えたという説ですよ。
土用の丑の日は江戸時代に平賀源内がウナギ屋へ教えた販売促進戦略
平賀 源内は、江戸時代の中期に活躍した讃岐国(現在の香川県)生まれの人物です。
学者・医師・実業家・作家・俳人・画家・発明家などの肩書きを持ち、幅広い分野で活躍していました。
静電気発生装置の「エレキテル」の発明が一番有名ではないでしょうか。
平賀 源内は、あるウナギ屋から「夏はウナギの旬でないから売上が落ちて困るので、助けて欲しい」と相談を受けました。
そこで平賀は、土用の丑の日に「う」のつくものを食べると精がつくというならわしに目を付けて、土用の丑の日に以下のような張り紙をするよう助言しました。
「土用の丑の日にはウナギを食べて精をつけよう」
すると、ウナギ屋に大勢の客が来るようになり、ほかのウナギ屋も少しずつ真似するようになって、土用の丑の日にウナギを食べるならわしが定着しました。
つまり、土用の丑の日のウナギは、平賀 源内が考えた販売促進策だったという説なんです。
土用の丑の日のウナギは、現代でいうと以下のような風習の先駆けといえます。
- 節分の恵方巻き
- バレンタインデーのチョコレート
- 母の日のカーネーション
- クリスマスのケーキ
平賀 源内はいろいろな才能を持っていますが、商才もあったのかもしれませんね。
夏バテにウナギを食べるといいという話は『万葉集』の時代にすでに存在していたとも
平賀 源内が土用の丑の日にウナギを食べるアイデアを考えたと紹介しました。
しかし、平賀が考えるより前に、夏にウナギを食べるならわしがあったという説もありますよ。
実は、奈良時代末期につくられたといわれる日本最古の歌集『万葉集(まんようしゅう)』に、大伴 家持(おおともの やかもち)が、ウナギを食べると精がつくという内容の和歌を載せています。
以下のような和歌です。
「石麻呂(いしまろ)に われ物申す 夏痩(なつやせ)に 良しといふ物ぞ 武奈伎(むなぎ)取り食せ」
意味は、以下のとおり。
「石麻呂(人名)に私は言った。夏バテにいいというウナギを取って食べなさいと」
なお、「石麻呂」は人名で、「むなぎ」はウナギのこと。
和歌では土用の丑の日とかどうかはわかりませんが、夏バテにウナギを食べるとよいという習慣が、万葉集のころにはすでにあったのかもしれませんね。
でも、ウナギは苦手だという場合もあると思います。
もともと、夏の土用の丑の日はウナギに限らず「う」のつくものを食べるのがならわしでしたよね。
そこで、現代でも「う」のつくものを食べてみてはいかがでしょうか。
▼「う」のつくおもな食材には、おもに以下のようなものがあります。
- 牛(牛丼・焼肉・ステーキ・ハンバーグ・ビーフカツ・牛骨ラーメンなど)
- 馬(馬刺しなど)
- うどん
- ウメ(梅干し・梅ジャム・梅酒など)
- ウリ類(ウリ・スイカ・メロン・キュウリ・カボチャなど)
- ウニ(軍艦巻き・ウニ丼・ウニパスタなど)
ほかにもたくさんありますよ。
夏の土用の丑の日でのウナギ以外のならわし
土用の丑の日にウナギを食べることについて紹介してきましたが、実は土用の丑の日はウナギ以外のならわしもあるんですよ。
ここからは、夏の土用の丑の日でのウナギ以外のならわしについて紹介していきます。
土用餅を食べる
京都市や北陸地方の一部には、土用の丑の日にあんころ餅を食べるならわしがあります。
あんころ餅は、お餅をあんこでくるんだ食べ物ですよ。
土用の丑の日に食べるあんころ餅は、「土用餅(どようもち)」と呼ばれています。
餅は「力持ち」から体力をつける意味、あんこは材料の小豆に邪気払いの力があるとされていることが由来といわれていますよ。
土用蜆(シジミ)を食べる
日本では古くから、夏と冬の季節の変わり目にシジミを食べるならわしがあります。
ちょうど土用の時期にあたるので、「土用蜆(シジミ)」と呼ばれますよ。
シジミは夏と冬の2度の旬があって、どちらも土用の時期に重なります。
さらにシジミは栄養価が高いです。
そのため、体調を崩しやすい夏と冬の土用には、シジミを食べるというならわしが生まれたといわれていますよ。
土用干しをする
夏の土用の時期に布団や衣類を干すと、害虫が寄りつかないといわれています。
これを「土用干し(どようぼし)」といいますよ。
また、布団や衣類だけでなく、夏の土用の時期に田んぼの水抜きをすると、稲が丈夫に育つという言い伝えもあります。
土用の日に土に関する作業をしない
土用の日には、土の神様がやってくるといわれています。
そのため、田畑の農作業や土木作業など土を扱う作業は、土用の時期はしないというならわしがありますよ。
土を触る作業をすると、土の神様が機嫌をそこねるというのが理由です。
ただし、「土用の間日(どようのまび)」といって、土用のあいだでも土の神様が留守の日があって、その日なら土に関する作業ができるといわれています。
農業や土木・建築にたずさわる業界では、一部では現在でも土用のときは間日以外の日は作業をしないというならわしを守っているところがありますよ。
ちなみに、土用の間日は毎年日にちが変わります。
さいごに
毎年、ウナギがおいしくお得に食べられる土用の丑の日は、夏の楽しみな行事のひとつですよね。
ウナギを食べると「本当に元気になるのかな?」と、疑わしい気持ちもあったかもしれません。
しかし、古く万葉集の時代からウナギを食べて精をつけていました。
また、土用の丑の日の時期は季節の変わり目で、体調を崩しやすいから余計に納得できますよね。
土用の丑の日の意味やウナギを食べる理由を理解して、体調不良となりやすい土用の期間は、ウナギを食べて元気にすごしましょう。
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