「半夏生(はんげしょう)」という日を知っていますか?
半夏生は、昔から日本にある季節を表す言葉です。
稲作などの農作業が生活の中心だった日本で、半夏生はとても重要な日でした。
今は、昔ほど稲作・農作業が重視されない時代ですので、半夏生の大切さもイメージしにくいかもしれません。
そこで、この記事では半夏生がいつなのか、半夏生の意味や由来・ならわし・食べ物などについて紹介しますね。
半夏生はいつ?年によっては日が変わる
半夏生がいつなのかが気になりますよね。
まず、半夏生がいつなのかということから紹介していきますね。
2021年(令和3年)の半夏生は、7月2日 金曜日です。
半夏生は、毎年同じ日ではなく、年によっては前後にズレます。
だいたい7月1〜2日ごろです。
半夏生は、夏至の日から11日目と決まっていました。
夏至の日は、毎年一定ではありません。
だから、半夏生も同じように年によって変わることがあります。
夏至は二十四節気のひとつです。
実は、二十四節気じたいが年によって固定されていません。
二十四節気が年によって変わることがある理由については、二十四節気の記事を参考にしてください。
なお現在、半夏生は「太陽の位置が黄経100度のとき」という天文学的な計算で決められています。
この場合でも毎年一定ではありません。
そのため、現在でも半夏生は毎年同じとは限らないのです。
▼以下に、今年と5年間の半夏生の日をまとめました。
ぜひ、参考にしてみてくださいね。
半夏生は「雑節」のひとつ
半夏生は「雑節(ざっせつ)」という暦のひとつです。
雑節というのは、聞き慣れない言葉かもしれません。
雑節は、二十四節気という季節を表した暦を補助するために、日本で考えられものです。
二十四節気は、中国の黄河下流域から日本に伝わりました。
そのため節気の名前や意味が、日本の気候とは少しズレています。
それを日本の気候に合うように補助したのが、雑節なのです。
雑節の歴史については、雑節の記事を見てくださいね。
半夏生は田植えを終える目安の時季
半夏生は雑節のひとつですが、どのような意味があるのでしょうか?
ここからは、半夏生がどのような日なのかを紹介しますね。
半夏生は、昔から田植えを終える目安の日とされていました。
つまり、半夏生が来ると農繁期(農業の忙しい時期)が終わるということです。
昔の人は、半夏生を目途に田植えなどの農作業をがんばり、半夏生を迎えるとゆっくり休んでいたのです。
昔の日本は、稲作中心の生活でしたので、半夏生はとても大事な日でした。
半夏生の由来は「七十二候」という暦
半夏生はどんな由来があるのか気になりますね。
ここからは、半夏生の由来や歴史について紹介していきます。
半夏生は日本生まれである雑節のひとつです。
しかし半夏生は雑節のなかで唯一、日本生まれではないんです。
半夏生のもとになったものは、中国から伝わった「七十二候(しちじゅうにこう)」という暦です。
七十二候は、二十四節気をさらに細分化して72に分けたもの。
その中の「夏至」の期間を3つに細分化したものの3番目が「半夏生(はんげしょうず)」です。
この半夏生(はんげしょうず)が、そのまま雑節の「半夏生(はんげしょう)」として使われました。
半夏生の名前の由来
半夏生は、漢字も読みかたも個性的ですよね。
いったいどんな理由で名付けられたのでしょうか。
ここからは、半夏生という名前の由来について紹介しますね。
半夏生は、この時期になると田に「半夏(はんげ)」という植物がの花が咲くことが名前の由来とされています。
半夏とは、別名「カラスビシャク(烏柄杓)」というサトイモ科の多年草です。
薬草としても使われます。
なお「ハンゲショウ」という名前のドクダミ科の植物もあります。
これは半夏生のころに花が咲くことと、白いきれいな花が咲くので「半化粧」の意味を掛け合わせて名付けられたといわれます。
半夏生で食べるもの
日本の風習では、いろいろなものを食べるならわしがあったりしますよね。
土用の丑の日にウナギを食べたり、冬至にカボチャを食べたりします。
半夏生でも何かを食べるのか気になりますよね。
実は、半夏生で食べるものは、地域によっていろいろあるのです。
▼半夏生で食べられるおもな食べ物と地域は、以下のとおり。
| 食べ物 | 地域 |
|---|---|
| タコ | 関西地方の一部 |
| うどん | 香川県の一部 |
| 半夏団子(ミョウガ団子) | 高知県の一部 |
| サバ | 福井県の一部 |
| 小麦でつくった餅・団子 | 関東地方・関西地方の一部など |
ほかにも地域によっては別のものを食べたりします。
また、とくに食べ物を食べるならわしがない地域も多いです。
代表的なものを詳しく見ていきましょう。
タコ

半夏生にタコを食べる地域があります。
タコを食べる地域は、関西地方の一部に多いです。
半夏生は、田植えなどの農作業を終える目安です。
そこで、植えた稲などの作物が、タコの足のようにたくさん根を張って育つように願をかけて、タコを食べます。
また、タコの足には吸盤がたくさん付いていますよね。
タコの吸盤のように、台地にしっかり根付いて欲しいという意味もあります。
うどん

半夏生にうどんを食べる地域は、香川県をはじめとする四国地方の一部です。
香川県は、讃岐うどんが有名で、うどんをよく食べる地域ですよね。
もともと香川県などでは、田植えや稲刈りなど、大きな農作業のあとにうどんを食べる風習がありました。
そのため、田植えを終える目安であり、農繁期の終わりを意味する半夏生の日にもうどんを食べるようになったといわれています。
農作業のあとにうどんを食べる理由は、諸説あります。
- つくる手間があまりかからない
- 疲れていても食べやすい
- お腹が減っているときに満腹になりやすい
ほかにもいろいろな説があります。
なお香川県製麺事業協同組合は、香川県の半夏生にうどんを食べるならわしにちなんで、半夏生になることが多い7月2日を「うどんの日」に制定しています。
半夏生のならわし・行事
半夏生には、地域によって、食べ物以外のならわしや行事があります。
▼おもな半夏生のならわし・行事は、以下のとおりです。
- 田の神様に豊作を祈る
- 働いてはいけない・農作物の収穫をしない
- 井戸にフタをする
- 竹を見ないようにする(埼玉県の一部)
- 妖怪が出る(三重県の一部)
半夏生のならわしには「〜してはいけない」というものが多いですよね。
そのため半夏生は「物忌みの日」ともいわれています。
代表的なならわしについて、詳しく見ていきましょう。
働いてはいけない・農作物の収穫をしない
半夏生の日は働いてはいけないとしている地域が多いです。
また、昔は働く=農作業なので、農作業の収穫作業もしませんでした。
半夏生は農繁期の終わりの目安なので、しっかり体を休ませるためにこのならわしができたとする説が有力です。
ほかに、半夏(はんげ)と禿(はげ)の語呂合わせで、半夏生のときに働くと畑がハゲになる=不作になるという伝承から生まれたならわしという説もあります。
井戸にフタをする
昔の迷信的な風習ですが、半夏生のときには前日の夜から井戸にフタをするという風習がありました。
半夏生の日には、空から毒気が降り注ぐという言い伝えがあったためです。
そのため、井戸水が毒を含まないようにフタをしました。
現在ではほとんど見られないならわしです。
野菜を食べないようにする
井戸にフタをするのと同じように、昔は半夏生の日に野菜を食べないならわしがありました。
理由は井戸のフタを同じで、空より降ってきた毒気が野菜に付くからとされています。
半夏生に野菜を食べないならわしも、現在はほとんど見られないといわれています。
さいごに
半夏生は、田植えという稲作の一大作業に関わる大事な日でした。
現代ではあまり半夏生という名前は聞かないかもしれません。
しかし今も米を主食にしているということは、自分たちが稲を育てていなくても、農家の誰かが稲を育てているということです。
おいしいごはんが食べられるのも、農家のかたが田植えをしているからですよね。
半夏生の日には、米農家のかたに感謝の気持ちをこめながらごはんを食べてみてはいかがでしょうか。
オマケ:ほかの雑節の記事
記念日のしおりでは、ほかにも雑節の記事がありますよ。
ぜひ、参考にしてみてくださいね。
